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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)1067号 判決

訴外 都民信用組合

理由

昭和三六年六月一二日被告名義で被告の印章を使用し、組合支店と、契約金額五〇四、一二〇円、積立期間二年、毎月払込金額二〇、〇〇〇円、満期昭和三八年六月一二日、毎月集金日一〇日の約でオリンピツク定期積金契約がなされ、原告は右契約に際し使用された印を、昭和三六年八月一〇日、自己の所持する若林と刻した印章に改印する旨の届を右支店に対してなした上、同三八年七月一一日原告に於て組合支店に対し右定期積金契約を解約申し入れ金二四五、二〇〇円を受領したこと、同日金二四五、二〇〇円が同支店に期間三カ月、利率年四分一厘の約定による無記名定期預金として受入れられたことは当事者間に争がない。

原告は右オリンピツク定期積立契約は原告が被告名義を以て為したものであつて、右各預金の契約者、債権者は原告であるといい、被告はこれを否認し被告自身であると主張する。

(証拠)をそう合すると、原告は昭和三四・五年頃から不動産仲介業の見習をしていたが、昭和三四年五・六月に被告と知り合いやがて同棲生活に入り、同棲後原告は自ら不動産仲介業を行つていた。昭和三五年一一月には仲介業者としての届出は被告名義でなし、実際上の不動産の仲介は主として原告において行いその報酬を得ていたところ、昭和三六年六月一二日前記組合支店の勧誘により、オリンピツク定期積立金契約を締結するに至つたが、被告と同棲中であつたので名義は被告の名義を用い印章も居合せた被告が自己の印章を押捺することにより契約書類が作成されたこと、その後の月々の積立金は原告に於て自己の出捐において為されたこと、原告は自己の契約した前記積立金契約に被告の印章を用いてあることに不自由を感じ、同年八月一〇日自己の所持する若林と刻した印章に改印届をした上、金二四〇、〇〇〇円を積立てた上、昭和三八年七月一一日解約を申入れ、元利金二四五、二〇〇円の払い戻しをうけ即日原告は、組合支店に無記名定期預金契約を申込み、右金二四五、二〇〇円を期間三カ月、利率年四分一厘の約で預け入れ、無記名定期預金証書(証書番号第四〇三三号)を作成させ、交付をうけたのち、直ちに右支店にこの証書を預けおいたことを認めることができ、右認定に反する被告本人尋問の結果は原告本人尋問の結果や証人吉田良の証言に照らし信用し難く、被告が自らの資金を積立てたオリンピツク定期積金を原告をして払い戻しさせた上原告を代理人又は使者として無記名定期預金契約をなしたものと見ることはできないのであつて、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。かりに右オリンピツク定期積金契約がその名義どおり被告によつて為され被告が積立てたものであると認定できるとすれば、原告が右積金契約の被告印を勝手に改印して解約し金二四五、二〇〇円を受領したことになり、原告が組合支店係員を欺罔して右金員を騙取し不法に領得したと見るべきであるから、原告がこの金員を無記名定期預金とした本件の場合右預金契約上の債権者は原告と認めざるを得ない。

従つて、都民信用組合北支店が昭和三八年七月一一日金二四五、二〇〇円を期間三カ月、利率年四分一厘の約で受入れた無記名定期期預金の契約上の債権者は原告であり右預金証書(証書番号第四〇三三号)は原告の所有であり、原告が右債権に基づき元本並に利息の返還請求権を右支店に対して有するものといわなければならない。

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